納屋町商店街の北詰から少し南に下ると、川魚がならぶ「鮒新」さんの南隣に工具や台所用品が所狭しと並んでいるお店が目に入ります。これが「竹市刃物店」です。明治の頃から納屋町で営んできた金物店が、1938年に刃物に特化して分家してできました。様々な包丁やハサミといった刃物の販売や刃物研ぎ、合いカギの取り替えなどを行っています。

台所から板場(プロの調理場)まで認める刃物の職人

ええもん売ってたらまた帰ってくる。それが信用

安い値段で中国産などの刃物が簡単に買えて、使えなくなればすぐに新しいものに買い換えるのが主流になっている今の時代で、刃物店は京都で数えるほどしか残っていません。そんな中で店主の氏本功(うじものいさお)さんは、先代からこの場所で80年、良いものを手入れしながら使っていくという刃物の文化を伝えています。
「切れへんようなものは売らへんよ。安いもん買ってたらすぐダメになるしな。親父がな、無理には売るなと言うてたんや。ええもん売ってたらまた帰ってくるってな。それが信用なんやろうな。」
氏本さんは、良い刃物の特徴は材質に「粘り」があることだと教えてくれました。鋼を叩いている間にかすが出て、鉄の材質が良くなるので、いい刃物を見分け方は、鋼と地金の色合いがはっきりしているものがポイントとのこと。刃物の柄の部分にも工夫があって、良い品には丈夫な牛の角が使われているのだとか。いい刃物を知ってその使い勝手の違いを理解して使い続けることで、刃物への愛着が生まれていくのでしょう。
「どこで聞いたのか、外国人も訪ねてくるで。外国人の方がよう知っとるわ」そう氏本さんは語ります。

親から子へ、何代にもわたって使われる道具

氏本さんは、岐阜県の関地方産・兵庫県の三木地方産と店内の品物は産地もそれぞれ熟知されておりますが、それもひとつひとつの品物が長く使われることを願ってのことです。鰹節(かつおぶし)(カツオの肉を加熱してから乾燥させた日本の保存食品)を削るカツオ箱という道具は一生どころではなく何代も受け継がれていくものだと語ります。そういった刃物の手入れも請け負っている氏元さんの元へは本職の板前さん(日本料理店・料亭で料理をつくる人)も通っています。